Unce Upon a Time...

イギリスの田舎暮らし、バイリンガル育児、イギリス英語についてお届けします

現地の言葉を話さないことは批判されるべきことなのか  ーこんまりさんの英語批判に思うことー

woman sitting on yellow armless chair near gray laptop computer

 

今年から始まったこんまりさんの番組がアメリカのNetflixで大人気になっています。アメリカ人のお宅をこんまりさんが訪問して片付け方を指南するというリアリティーショーです。
 
次から次へと番組が制作されて、競争が激しいアメリカのリアリティーショーの中で、日本人が主役のものが大ブレイクしているのはすごい!と私も応援していたのですが、ここにきてTwitter上でこんまりさんを批判した作家が大炎上する事件がありました
 
前回書いた、米デューク大学の教員が中国人留学生に対して「中国語ではなく英語で話せ」と言った事件と類似しています。
 
というのは、この作家はこんまり流の片づけメソッドを批判したのではなく、こんまりさんが英語を話さないことを批判したのです。
 
問題のツイートはこちら↓ 
 
 
 

I confess: I hate Marie Kondo because, aesthetically speaking, I’m on the side of clutter. As for her language: It’s OK with me that she doesn’t speak English to her huge American audience but it does suggest that America is in decline as a superpower.

 
 返信430件のリツイート2,62
 
 
 
そのまま訳すと、
 

告白します。私はこんまりが大嫌い。なぜなら、きれい度合で言ったら私は散らかす側の人間だから。それから言葉についてだけど、彼女が全米の視聴者に対して英語で話さないのは別にいいけど、それはアメリカのスーパーパワーの衰退を暗示してるわね。

 

という感じでしょうか。(稚拙な訳ですいません。)
 
しかも、たちの悪いことに、このツイートの前に一度別のツイートをしていて、何を思ったのかそれを削除してこの問題ツイートを新たにしたようです。フォロワーがスクリーンショットをとっていたのでばれました。
 
削除されたツイート↓
 
このツイートは、
片付け王のマリエ・コンドウが英語を話せるようになって初めて私はアメリカが衰退してないと確信できるわ。
 というような意味です。
 
 
どちらのツイートも悪意に満ちているのは変わりないので、なぜ一つ目を削除して2つ目をツイートしたのかはよくわかりません。あえて言えば、二つ目の方が少しひねってあって婉曲的(より嫌味っぽい)、程度かと思います。
 
 
アメリカを「スーパーパワー」と呼んだり、英語も話さない外国人がアメリカで活躍していることを嘆き「アメリカで活躍したいなら英語を話せるようになってから来い」と言っているようで、非常に時代錯誤で帝国主義的なツイートです。
 
一見すると、トランプ大統領の熱狂的支持者のヒルビリーかと思えるようなこのツイートですが、発信者のバーバラ・エーレンライクはニューヨークタイムズ紙などでもコラムを持つ、いわゆる知識人と呼ばれる類の人です。それゆえ衝撃を受けた人がたくさんいたようです。
 
普段はジャーナリストとして中立的な発言を心がけていたけれど、つい本音が出てしまたったということでしょうか。Twitter上での反応を見ていると、大半の人はこのツイートを「人種差別的でありえない」と感じているようです。
 
 

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では実際のところ、海外で現地の言葉を話さないことは批判されるべきことなのか
 
私の個人的な意見としては、(仕事も含めて)生活する上で最低限必要な語学力があれば、それ以上は別に他人がとやかくいうことではないんじゃないの、というものです。これは日本に住む外国人も同じです。
 
そもそも必要なレベルの語学スキルがなければ外国人を雇うことはないわけで、例えばこんまりさんの本がベストセラーになってNetflixが大ブレイクしているのを見ると、彼女がアメリカで受け入れられているのは明らかです。
 
実際こんまりさんはTEDなどで英語でプレゼンもしていて、アメリカ人にアピールするだけの十分な英語力を持っているといえます。
 
 
 
ではこの作家はなぜこんまりさんの英語を攻撃したのか。それはおそらく、他にこんまりさんについて何か気に入らないところがあったのではと思います。
 
単に片付けられない人で「片付け」がブームになってるのがおもしろくなかったのか、自分より40歳以上若い女性が(この方は77歳)自分の知らないことを知っているという事実が受け入れられないのか、ほかの理由なのかはわかりません。
 
でも、その自分が気に入らない部分を全面に出してこんまり批判をしてしまうと、自分の立場が悪くなると思い、手っ取り早い「英語」を攻撃したのではないかと思います。全くの憶測ですが。しかし、この立場の人が、自身がそのような発言をして問題になると予測できなかったというのは驚きです。
 
 

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現地の人にとって、外国人のつたない英語を攻撃することはいとも簡単です。
 
アメリカ人の学部生のなかにも、自分が勉強しなかったがために成績が悪かったようなときでも、「教員の英語が下手で授業がよく理解できなかったからだ」とよく外国人教員の英語を言い訳に使います(アメリカの大学は学科によっては教員の外国人率がとても高いです)。
 
しかし、10代後半~20歳そこそこの学生と、ベテランジャーナリストでは発言の重みが違います。少なくともTwitter上では、この発言を擁護する声は皆無で、袋叩きにあっている状態なのでまだ将来は明るいのかなと思います。
 
リベラルな都市部のアメリカでも、一部(特に白人の高齢者)の国粋主義ともとれるようなアメリカ=ナンバーワン!という考えの人は、残念ながら今でも平気で英語ができないという点で外国人を見下した発言をするようです。
 
海外に住む日本人が、運悪くそういう人に出くわしてしまったら、やるべき事(仕事、コミュニティの一員として機能する、など)ができているなら、自信もってスルーしてOKだと思います。怒ったり悲しんだりするのはエネルギーの無駄です。
 
 
その一方で、現地語は文句言われない程度に話せるほうがいい、というのも事実だと思います。日常生活を円滑にするためにも、精神的に無駄に疲れることを避けるためにも。ある程度の現地語を話さないと、関係ないところで攻撃される機会を提供してしまうことにもなります。
 
また、言葉を習得すること以上に、現地文化をレスペクトすることも大事だと思います。そういうのはすぐ態度にでます。言葉が微妙でも、コミュニティに受け入れてもらおうと努力する姿勢をみせるだけで随分違います。(外国かぶれになるというわけではなく、自分が慣れ親しんだものではない外国文化に対して、好意的な理解を示すという意味です。)
 
 
外国人が現地の言葉を流暢に話すことは褒められるべきことであっても、それができないことは責められるべきことではないと思います。
 
今後もこんまりさんのアメリカでのますますの活躍を応援したいと思います!