長いタイトルですいません。
昨日、アメリカのデューク大学の教授が「学内では中国語で話さずに英語で話しなさい」という内容のメールを、自身が運営を担当する修士プログラムを履修する学生全員宛てに送ったことがTwitter上で拡散されたのちに、役職から辞任することになったというニュースを読みました。
外国で暮らす身として、スルーできない事件だったので思うところを書きます。
私の率直な感想は、教授側も学生側もどっちもどっちだ、です。
ニュースの詳細はこちら。
教員も悪い
今やアメリカの大学は(イギリスの大学も)、程度の差こそあれ、どこも中国人留学生であふれています。多くの大学では、キャンパス内で中国語を聞かない日はないといっても言い過ぎではないはずです。
忘れてならないのは、どこの国の留学生であろうと、同じ国の出身者同士であれば母国語で話すのはふつうです。学生だけでなく、教員も同じです。
ところが数が数だけに、そして中国人学生は群れる傾向にあるので、中国人留学生が集団で中国語を話していると非常に目立つのは事実でしょう。
この教員がどういうバックグラウンドかまでは調べていませんが、キャンパス中にあふれる中国語に嫌気がさしてしまったのかもしれない、とは思います。
でも、言っちゃだめです。自分の心のなかに留めておくべきでした。
個人的な意見でも、立場的に権力を持つ教授から学生へ発せられるとアカデミックな差別になります。しかも、学内で中国語を話していると、インターンシップへの応募の際に不利になる可能性がある、と脅しともとれるような発言はもってのほかです。
もっとも、授業中や会議中などオフィシャルな場での会話は、中国語を話さない人が内容を理解できなくなるので、「中国語ではなく英語で話すように」というのはOKなのではと個人的には思います。
念のため書いておくと、この先生が修士プログラムの学生全員宛てに送ったメールの文面は、決して高圧的ではなく、どちらかというと丁寧な口調で書かれています。
それでも、アカデミックな差別を匂わせたら一発アウトです。
また大学にとって中国人留学生は大事な「お客さん」です。国内学生が払う学費の数倍の額を払ってきてくれるからです。そんな事情もあり大学は守ってくれません。
誰もかれもが外国人に対して寛容なわけではないので、大声で外国語の会話が聞こえてくるとよく思わない人はたくさんいます。日本にもいます。
これ自体については、普段から外国人と接点があるかどうか(外国人に慣れているか)や、特定の国の人への個人的な感情もあると思うので難しいところではあります。
でも、この教員がとった行動は、アカデミアの人間として愚かだったとしかいえないです。
テニュア審査前のアシスタントプロフェッサー(日本でいう助教授、「テニュア審査」にパスしないと大学に残れない)だったようですが、彼女のテニュア審査にこれがどう影響するのか。。。
プログラムディレクターの長なんて、事務が増えて研究ができなくなるので、普通は若手はあまりやりたがらないポジションです。それでも大学に対していい印象を持ってもらうべくがんばってたんだと思います。
今回だけでなく、過去にも似たような内容のメールを履修者全員に送っていたとのことです。そのときに事の重大性を誰かに指摘してもらえなかったのが不運でした。
学生たちも悪い
何語であろうと、他の人もたくさんいる場所で集団で大声で話すのはマナー違反です。
今回のメールは、学生が集うラウンジや学習スペースでの会話についての苦言でした。メールの原文では、一部の留学生が中国語でしている会話が "VERY LOUDLY" だと強調して書かれていました。
今回の件は、「うるさい」ということと「外国語(この場合は中国語)」という2つの要素がまざっていますが、仮に同じように外国語で話していても、まわりの迷惑にならないレベルのトーンであれば問題視されなかったのでは、とも思います。
私自身は今のところ日本語を話していて、Speak English! と面と向かっていわれたことはありません。ただ、田舎に住んでいることもあり、外で日本語を話すときはけっこう気を使って生活をしています。
アメリカは移民の国なので、「英語を話せ」と言われたら、「母国語を話してなにが悪い!」と強気で喧嘩腰になってしまうのもわかります。
でも、外国で暮らす以上は、母国では問題がなかった行動が外国では問題になりえる、ということは多々あることを忘れてはいけないと思います。