Unce Upon a Time...

イギリスの田舎暮らし、バイリンガル育児、イギリス英語についてお届けします

日本人のスポ根カルチャー

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穴があったらとりあえず入ってみる。

 

育児関連の本などを読んでいると、よく「結果ではなく頑張った過程を褒めなさい」と書いてあります。

テストの点数が良かったときは「すごい点数だね!」と結果を褒めるのではなく、「頑張って勉強してたもんね!」と努力した過程を褒めましょう、というものです。結果ばかり褒めていると努力しなくなったり、苦手なものに挑戦しなくなるからとのことです。

 

このやり方自体は私も育児をする中で取り入れていて、「すごいね、すごいね~」と言って褒め続けて(極端な言い方をすれば)プライドばかり高くて打たれ弱い子になるよりは、「がんばったの見てたよ!」と声をかけることで多少の困難に直面しても途中で投げ出すことなく粘り強くチャレンジすることができる子になって欲しいと思っています。

 

そうは思いつつも、日本では「努力すること」が美化されすぎて、「なぜ努力するのか」の部分が抜け落ちたまま努力することだけにフォーカスが当たっているように思えます

 

なぜこんなことを思ったかというと、、、

娘の学校の給食タイムの話を毎日聞いていて、あまりに日本とギャップがあるなぁと思ったのがきっかけです。

 

ちょうどこんな記事↓を読んだ直後だったのもありますが、日本の小学校の給食は「食べ残し禁止」「私語禁止」などいろいろと食事が楽しくなくなる要素が多い気がします。

 

dot.asahi.com

 

「私語禁止」は一部の学校だと思いますが、残さず全部食べさせるという指導は一般的だと思います。食べたくないものを頑張って(無理して)食べることがなぜ称賛されるべきことなのか。

栄養バランスを考えると「好きなものだけ食べたらいい」と言えないのは理解できますが、苦手な食べ物を無理やり口に入れて飲み込ませるのは大げさに言えば子供の人権侵害というか、少なくとも食に対する子供の自由を奪っていると思います。

 

食べないといけない理由が栄養価の偏りなのであれば、例えば特定の野菜が食べられないなら、①その野菜にはどんな栄養があって、②それを食べないことは身体にどういう影響が出て、③もしどうしてもその野菜が食べられないなら同じような栄養価の代替できる食品はどんなものか、などの会話を子供とするべきだと思います。

そういった「なぜ」食べないといけないかの部分をすっとばして、「食べ残しはだめ」を強要するのはなぜなのか。

 

給食の時間は短いからいちいち説明していられないという現場の事情もわからなくはないです。

でも、ここで見えてくるのが、苦しい試練を乗り越えた人がエライという価値観なのではと思います。わが家ではそれを「日本のスポ根カルチャー」と呼んでいます。

 

苦労して頑張った人がエライということは、楽した人はだめだということになります。 

会社などの組織でシニア層が俺も若いころ苦労したんだからと言って若手に暗黙の残業指示をするのも、主婦が家事や育児を外注するのになんとなく後ろめたい気持ちを持ってしまうのもこの日本のスポ根性カルチャー所以だと思います。楽をすることは許されない。

 

娘の学校の給食はカフェテリア形式で、自分で好きなものを自由に選ぶスタイルです。

何種類かある中からメインをひとつ選んで、野菜はサラダバー(簡単なものですが)から取ります。欲しくなければ取らなくてもOKです。一応給食のおばちゃん的な人がいて「野菜も取らないとだめよー」など声をかけてくれるそうですが強制はされません。

イギリスの小学校の教員へ食育のアドバイスをするThe School Food Trustは「お皿の上のものを全て食べることを強制することは逆効果だ」と言っています。

www.bbc.co.uk

 

 ちなみにうちの夫は小学校のときに甘く煮た金時豆がどうしても食べられず、でも無理やり食べさせられたためそれがトラウマになり今でも豆全般だめです。無理やり飲み込んだことで食べれるようになるどころか逆効果です。

当時は今以上に苦しんで頑張った人を称える文化だった思うので、好きなものだけ食べて苦手なものは食べない(=楽する)なんてあり得なかったんだと思います。

 

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穴の中には虫さんがたくさんいましたー 

 

給食食べ残し禁止だけでなく、貧血や日射病で倒れる子が出ても長々と続く朝礼、運動会のスパルタ練習、皆勤賞への過剰な奨励など、スポ根カルチャーは日本の小学校に未だ深く根付いているように思えます。これからの日本をリードする子供たちに理屈の通じない根性論を小学校で叩き込むのはいかがなものか。

 

日本の小学校の規律を大事にするやり方全体が悪いとは思いません。良い面もたくさんあるので娘にも折をみて教えていきたいと思っています。

でも、金時豆が食べられなくてもちゃんと大人になれることは知ってもらいたい。