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バイリンガルと言葉の遅れ:研究結果と我が家の場合

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子供にバイリンガルになってもらいたいけど、赤ちゃんの頃から二つ以上の言葉にふれていると言葉の遅れにつながるのでは?

 

これはバイリンガル育児をする親が必ず直面する不安ではないでしょうか。私も一時期は暇さえあれば調べていました。

このブログでも何度か書いていますが、我が家の4歳の娘は話し始めたのがすごく遅く、2歳になったときにはほとんど発語がありませんでした。一般的には、子供は2歳になると50語ぐらいの発語があり、2語文も話すと言われています。うちの娘は2歳の時点で、娘が言えて他人が理解できた言葉は数語でした。

 

バイリンガルの子供は話し出すのが遅い、ということは少なくともネット上ではよく言われている話です。しかし、言語学や医学の研究によると2言語以上を話すことと言葉の遅れは関係がないことが定説のようです。

 

今回の記事では、研究ではバイリンガルもモノリンガルの子供と同じタイミングで話し出すと言われているのにもかかわらず、実際にバイリンガル環境にいる子供を育てる親の多くが子供の言葉の遅れを心配するのはなぜなのかについても考えてみたいです。

 

4歳になった娘は、日本語は普通の4歳児のレベル、英語はモノリンガルのネイティブの子に比べると遅れはあるもの、学校生活を順調に遅れるレベルは身についています。

私は医者でも専門家でもなんでもないので確かなことは言えません。でも、うちの子はこうだった、ということを書きたいと思います。今どこかで不安になっている方に読んでもらえるとうれしいです。

 

 目次

 

話し出すのが遅い子供(Late Talkers)と話し出すのは遅いが後でキャッチップする子供(Late Broomers)

一般的に、子供の言語発達の遅れは2歳になった時点ではかることが多いようです。データにもよりますが、標準より言葉の発達が遅い子供は全体の15%前後いるといわれています。

 

2歳の時点で標準の言語発達レベルに達していない子供のうち、約半分3歳ごろまでに語彙力が追い付き就学年齢ごろまでには文法と会話力も追い付くそうです。

この2歳時点では言葉の発達が遅いものの、3歳から5歳ごろまでにキャッチアップする子供は遅咲きタイプ(Late Broomers)と呼ばれます。

2歳~2歳半のあいだに言葉の遅れがみられた子供は、大きくなってからも言語スキルが弱い(表現力、読解力、語彙量など)という結果の研究もあるそうです。

 

話し出すのが遅い子供は何が原因なのか、というところは今の研究では簡単にはわからないようです。ただ、話し出すのが遅い子供によく共通するのは、遺伝、男の子、理想とされる体重より85%以下で産まれた、37週以前に産まれた、などの要素とのことです。バイリンガル環境ということは含まれていません。

 

 

2言語以上話すことと言葉の遅れの関係

現在のところ、バイリンガル環境と子供が話し出すタイミングには関連性がないということが言語学や医学では定説なようです。つまり、バイリンガルの子供もモノリンガルの子供が話し出すのと同じタイミングで話し出すということです。

 

 同時進行で2言語を習得するバイリンガル(産まれたときから2言語を同時に習得)と、第一言語をある程度習得したあと3歳までに第二言語を習得するバイリンガルでは発達過程も異なります。

前者は国際結婚などで両親が異なる言語を話す場合など、後者は家庭内と学校で話されている言語が違う場合などが考えられます。

 

同時進行タイプのバイリンガルの子供は、最初は二つの言葉を区別なく使い、あとから目的や人によって言語を使い分けるようになります。発達のタイミングはモノリンガルの子供と同じと言われています。

第一言語を習得した後に第二言語を学ぶバイリンガルの子供は、第二言語を学ぶ際は第一言語で得た知識を利用して習得します。第二言語の習得ペースは子供の性格や環境によって変わります。

 

 

それでも言葉の遅れはバイリンガル環境が原因なのではと心配する親が多いのはなぜなのか 

このように、研究では2言語以上を話すことと言葉の遅れを結びつけるエビデンスは見つかっていないそうです。

それでもネット上で見ていると、バイリンガルの子供を育てる親が自分の子供がなかなか話し出さないのはバイリンガル環境が原因なのでは、と心配する声が山のようにあります。

 

ここからは個人的な意見になるのですが、 これは実際は何か他の理由でお子さんの言葉の発達が標準よりゆっくりめなときに、親がまず初めに思いつくわかりやすい可能性が「バイリンガル環境」だから、「2言語以上に接しているから混乱しているのでは?」という発想になってしまうのではないかと思います。

もしくは、バイリンガルの子供は言葉が遅い、という話をどこかで読んだか聞いたかして、無意識にその情報をもとに判断している可能性もあります。

 

これは一種の認知バイアスなのではと思います。具体的には、心理学でいうところのアベイラビリティヒューリスティック(Availabilty Heuristics)です。どういうものかというと、人はものごとの意思決定をする際に、頭に浮かんできやすい事柄を優先して判断する傾向がある、というものです。


実際に、日本語オンリーの育児環境でも言葉の遅れはトップに入る心配事ではないでしょうか。試しにグーグルで「子供 言葉の遅れ」で検索すると1400万件ヒットします。「子供 歩かない」は700万件、「子供 いやいや」は900万件なので子育て中の親の言葉の発達への関心の高さがうかがえます。多かれ少なかれ、子供の言葉の発達への不安は多くの親が経験するものなのでしょう。これはバイリンガルでもモノリンガルでも変わりません。

自分の子供の話になりますが、当時は不安でいっぱいで冷静に考えられず、私も2言語に接していることも問題なのではと思っていました。でも今では、娘は日本で普通に育てていても話し出すのは周りの子より遅かったはずだと思っています。根拠は母親の勘です。全く科学的でなくて申し訳ないですが。

同じ子供を日本で育てる以外に比較する方法はないので、確実なことは言えません。でも、娘の慎重な性格や、話すことより読むことへの関心の高さ(視覚優位、というのでしょうか。このあたりのこと今後勉強したいと思っています)、及び私の心配性な性格などを考えると、きっと日本で日本語だけの環境で育児をしていても同じような不安を持ったのではと思います。

 

ここでひとつ注意すべきは、持って生まれた言語障害ある子供へのバイリンガル環境の影響は未だよくわかっていないようです。「混乱を避けるために1言語に絞るべきだ」とする専門家が一部いる一方で、「言語障害があっても2言語以上使用することは可能だ」とする専門家もいます。実際にダウン症や自閉症、聴覚障害がある子供でも2つ以上の言語を習得することができるそうです。

 

 最後に

バイリンガル環境で子育てをしていて、子供が2歳を過ぎてもなかなか言葉が出てこないととても不安になると思います。不安が大きすぎてどうにもならない場合や、言語障害が疑われる場合は、すぐに専門家に相談をするべきだと思います。

でも、言葉を発することはできなくても、こちらの言うことはしっかり理解していて、言葉以外(ジェスチャーなどを使って)でのコミュニケーションを明らかに楽しんでいるようであれば、お子さんを信じてもう少し待ってあげてもいいかもしれないです。

 

うちの娘はそうでした。あの時もっと娘を信じて、他の子と比べて焦って心配ばっかりしていないで、2歳の娘との日々をもっと素直に楽しんだらよかったな、と今では少し後悔しています。

周りの子がどんどんおしゃべりが上手になるなか、ひとり「あーあーうーうー」言ってた娘も、今では朝から晩までしゃべってるか歌ってます。私は専門家でも何でもないですが、こういうケースもありましたということでここに書かせてもらいました。

 

出典URL:

Bilingualism and Speech & Language Disorders | Multilingualism: Empowering Individuals, Transforming Societies (MEITS)

Late Talkers: What You Can Do If Your Child Is Not Talking Yet

Speech Delay in Bilingual Kids: Expert Advice from a Speech Therapist

 

 

 

kamemari.hatenablog.com