この週末はイギリスでは母の日だった。
イギリスでは母の日にはカードやお花を送ることに加えて、お母さんをアフタヌーンティに連れていくことが定番だそうだ。今日は母に日にちなんで母と子供の親子関係について少し書いてみたい。
ワーキングマザーの子供は専業主婦の子供よりも成功する可能性が高い?
先日このような記事をみた。「ワーキングマザーを持つ子供は専業主婦のお母さんを持つ子供よりも将来的に成功する可能性が高い」という研究結果がでたそうである。
ここでいう成功とは年収と地位(管理職かどうか)で測られている。
この研究によると、女性の場合、母親が働いている場合と専業主婦の場合とで年収に4%の差があり、管理職についている割合が母親が働いている場合は3人に1人、そうでない場合は4人に1人だそうだ。
このことから、子供を持つ女性の雇用は、次の世代の女性たちのより積極的な社会進出を促すことを示唆すると述べられている。
また、ワーキングマザーを持つ子供たちは職場で女性を対等に扱い、男性でも家事参加度合が高いそうである。
ワーキングマザーだった母
私の母はワーキングマザーだった。定年の少し前に退職して、その後はNPO活動やらなんやらと今でも毎日活動的に過ごしている。
働いていたころの母は、仕事は情熱をもって取り組んでいたが、家事はいまいち得意な方ではなかった。仕事を辞めたあとはそれなりに家のことをがんばろうとしたようだが、やはり今でも客観的にみて家事能力はいまひとつである。
当時からするとわりとリベラルというか、ちょっと変わっていた父親が家事や育児をサポートしていたのであの家はなんとかまわっていたのだと思う。
先ほどの研究が示したとおり、ワーキングマザーを持つ私は小さいころから専業主婦になりたいと思ったことは一度もなかった。当然のように何か自分にあった仕事をみつけて成功することを目指していた。
では、もし私のお母さんが専業主婦だった場合には、自分も結婚して主婦になることを自然に選択していたかというと、とてもそうは思えない。なぜなら、前述のとおり私のお母さんは専業主婦としてうまくやっていくには少し適応を欠いた人だったからだ。
もし私のお母さんが専業主婦だったら、毎日毎日必死のあまり笑顔も少ない家庭になっていたのではないかと思う。その反動で、逆に私は「絶対専業主婦にはならないでキャリアを目指す!」と心に決めていたと思う。
同じワーキングマザーでも、例えば私のお母さんのように好きな仕事に打ち込んでいる姿を子供が見るのと、いやいやながら職場へ行き毎日仕事のぐちを聞かされるのでは、子供へ与える影響が全く違うことは簡単に想像できる。
後者の場合は、子供は働くことに対してネガティブな印象を持ち、専業主婦志向が高まるとも考えられる。つまり、何が言いたいかというと、母親は好きなことをすればいい、そしてそれを見て育つ子供が一番ハッピーなのでは、ということである。
「自分らしく生きる母親」を目指す
この研究では「成功」を年収と地位で測っていたが、年収と地位が高い人が必ずしもハッピーかというとそうとは限らない。
年収と人の幸福度の関係は、年収が一定額を超えるとあまり相関がなくなることが知られている。少し極端だが、母親が働いているかそうでないかは、年収や地位には影響があるかもしれないが、「子供の幸福度」には有意な影響を示さないかもしれないと考えることもできる。
アカデミアにおけるhappiness の研究ブームは去ってしまっているようにも思われるが、ぜひ社会学や経済学の研究者に取り組んでもらいたいトピックスである。
私の母はいい面もたくさんあるが、子供の私から見ても何かと弱点の多い人だ。すぐ感情的になるし、他人の気持ちに鈍感である。要領もよくない。よって、「お母さんのような人になりたいか」と聞かれれば、大きな声でノーである。
しかし、お母さんのように(好きなことを仕事にして)生きたいか、と聞かれればイエス。娘にこう答えさせることができる私のお母さんは、お母さんとして大成功だと思う。
もちろん、ここでいう仕事は家庭内のさまざまな仕事も含む。
専業主婦のお母さんが毎日いきいきと家事をこなし、家族のくつろぎの場を作り出し、家庭内のさまざまなことがスムーズにまわるように努力することも同じである。家事が得意なお母さんが自分の能力を最大限に発揮している姿をみることは子供にはとてもポジティブに作用すると思う。
つまり、母親が自分らしく生きることによって、それを見て育つ子供は他人と自分を比べることなく、躊躇せず自信を持って自分の道を選ぶことができるようになると言えるのではないか。そしてそれが子供を一番ハッピーにするのではないだろうか。
私の娘はまだ赤ちゃんだが(もう赤ちゃんと呼んではいけないかもしれないが)、ぜひ自分の得意分野を見つけたらそれに全力投球する大胆さを持ってもらいたい。そのためには私自身が自信をもって自分の思う道を進もうと思う。