Unce Upon a Time...

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バイリンガルは言葉によって性格が変わる?

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2言語以上のことばを話す人は、どの言葉を話すかによって性格が変わるのでしょうか。

これ、私の長年の疑問です。今日はこのことについて書いてみます。

 

 

 

「日本語のときはおっとりしているのに、英語で話しだすと早口だしアグレッシブな感じになるよね」

これは昔、私が東京で働いていたころに同僚から言われた言葉です。似たようなことは別の人からも言われたことがあります。

 

話す言葉によって、同じ人でも性格が変わる、もしくは相手が受ける印象が変わるということは実際どの程度あるのでしょうか。

 

興味深い研究がありました。2010年のものでちょっと古いですが、香港に住む中国語と英語のバイリンガルの人たちを対象に行った分析です。

1つ目の分析では、性格にまつわる質問事項にそれぞれ被験者が英語と中国語で答えるというもの。2つ目の分析では、一定期間のあいだに収集された両言語での実際の会話データから特性を洗い出すというものです。

元論文はこちら:

Chen and Bond (2010) Two languages, Two Personalities? Examining Language Effects on the Expression of Personality in a Bilingual Context, Personality and Social Psychology Bulltin  https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0146167210385360

 

その結果、言葉は人の性格の様々な側面に影響を与えていることがわかったそうです。

さらに、二つ以上の言葉を話すことによって、その言葉を話す集団の文化にアクセスすることになり、その集団において一般的な行動や表現、態度をとるようになるそうです。

 

やはり言葉と文化の結びつきはとても深いですね。

 

ここで私が大事だと思うのは、バイリンガルの人は、それぞれの言葉を話されている文化では何が一般的かを知ったうえでそうしている、という点です。

だから「言葉によって性格が変わる」というと語弊がありますね。言葉によって(意識的に)性格を変えている、と言った方が正しいと思います。

 

言葉によって、ある種の「性格の使い分け」をするには、それぞれの言葉を話す集団の文化を深く知っているということが前提になります。

ある文化ではどんな態度が受け入れられ、受け入れられないか、別の文化では同じ態度はどのように取られるか、などを理解し柔軟に適応するということはかなり高度なスキルです。

 

逆の言い方をすると、バイリンガルでもモノカルチュラルな人(言葉は2言語話しても、文化は1つしか知らない人)は、どちらの言葉を話していても性格は変わらないと言えます。(実は世界中のバイリンガルの人たちの多くはモノカルチュラルだそうです※。)

 

いま4歳半の娘は、日本語を話していても英語を話していてもあまり性格は変わりません。バイリンガルだけどモノカルチュラルの部類に入るのではと思います。これから日英の文化の差を実感するようになると使い分けがもっと前面に出てくるのかもしれないです。

人種・文化の差を意識しだすのは9歳ごろからという研究も読んだことがあります。

 

もちろん、人は環境によって性格や態度は多少変わります。例えば、娘は学校でお友達や先生といるときと、私たち親の前ではちょっと違います。学校では自分をより積極的に見せようとしているのではと思います。学校から帰ってきた直後はテンション高いです(笑)。

英語だとリアクションも大きくなるので、言葉のせいかと思ったこともありますが、この性格の差は、使っている言葉が違うからではないと思います。日本で日本語だけの環境の子でもウチとソトではキャラが違うでしょうし、大人だって職場と家では違うこともあります。

冒頭に書いた、同僚に言われた私の日本語と英語での性格の違い(おっとりvs.アグレッシブ)も、言葉によるものではなく場面によるものだと思われます。職場では主に英語、プライベートの食事会などでは日本語だったので。男性が圧倒的に多い職場だったので多少アグレッシブでないとやっていけませんでした。

 

 先日書いた、「理想のバイリンガル」像の項目に、

 

両言語の文化に対して前向きの心的態度を持つと同様に、母文化に対して文化の担い手としてのアイデンティティを持っていること。つまり、母文化、母語集団へのアイデンティティを失っていない、「バイカルチュラル」であること。

 

というものがありました。

母文化の強化がまず大事ですが、両言語の文化に対して前向きになれるためには、両方の文化をよく知るところから始まります。

 

というわけで、わが家ではクリスマスとお正月、どっちも気合を入れなくてはならない(!)ようです。

今日で学校は最終日。明日から家族でプチ国内旅行で都会のクリスマスマーケットを観光してきます。帰ってきた後はおせち作りもできるだけ頑張ります。。

 

kamemari.hatenablog.com

 

 

※ Change of Language, Change of Personality? | Psychology Today