我が家では「家では日本語」「外では英語」をできる限り徹底しています。
娘が産まれて以来、このやり方でいいのかと悩みながら来ていますが、勇気づけられる研究結果を読んだので、少し前のニュースになるがご紹介します。
家で母語を話すバイリンガルの子供はIQが高い
BILINGUAL CHILDREN WHO SPEAK NATIVE LANGUAGE AT HOME HAVE HIGHER INTELLIGENCE
https://www.reading.ac.uk/news-and-events/releases/PR773873.aspx
自宅で日常的に母語を使ってコミュニケーションをしているバイリンガルの子供は、そうでないバイリンガルの子供と比べてIQが高いという研究結果がでたそうです。
研究の対象となったのは、イギリスに住む7歳から11歳のバイリンガルのトルコ人の子供たち※。対象となった子供たちは、全員学校では英語で教育を受けています。しかし、家庭ではトルコ語(母語)を話す子供の方が、家庭でも英語(第二言語)を話す子供よりIQテストのスコアが高かったそうでう。
この調査を行った研究者によれば、2つの言語で言葉を学ぶプロセスとして、「小さいうちに第一言語でその言葉のコンセプトをつかんでおいて、後から(学校で)第二言語でそれを意味する言葉を学ぶ方が理解しやすい」そうです。
このことは直感的にも納得しやすいです。何か新しいコンセプトを学ぶときに、それをあまり馴染みのない言葉でやるのは難しいということは容易に想像できます。
この研究を行ったグループは、外国で子供を育てている人は、家庭で子供と話すときには母語を使い続けることで子供の知能を伸ばすことができると説明しています。
家庭で母語を話し続けるには相当な努力が必要なこともある
子供が学校に行くようになると、必然的に子供は一日の中で英語(もしくは他の現地語)で話す時間が増えきます。親と遊ぶよりもお友達と遊ぶ方が楽しくなってくる年ごろでもあります。親と話すときしか使わない言葉よりも、学校で友達や先生とコミュニケーションをとる言葉の方に興味が出てくるのはある意味当然かもしれません。
今回の研究は、両親のうち少なくともどちらかが大学を出ている家庭が抽出されていました。このことから、調査に使われた親の多くは、英語もある程度は話せる人が多いと考えられます。
それでも敢えて、母語で話し続けるには親側にも相当の努力がいります。子供が英語で話したがる場合は、気を抜いていると子供との会話の中で英語が占める割合がどんどん増えていってしまうからです。
子供が英語で話しかけてきたときに、親が母語(便宜上以下日本語と書く)で返すと、鬱陶しく感じる感じる子供もいるでしょう。余計に英語に固執してしまうこともあるかもしれないです。
親が英語ができない方が子供はバイリンガルになりやすい?
私が今までに会った完璧なバイリンガルの友人の中で、とても優秀な人が二人います。正確に言うと、そのうち一人はもう1言語できるのでトリリンガルです。
二人とも日本語と英語ともに、単に話せるだけではなく、非常に高い文章力及びコミュニケーション能力を両言語で持っています。初対面では「視野の広いしっかりした考え方の人だな」という印象を受けました。とても自然で丁寧な日本語を話すので明らかな「外国帰り」という雰囲気ではありません。2人とも海外で生まれ育ったものの、日本の上位の大学を卒業し、今は国際的な仕事に就いています。
そんな2人に、如何にしてバイリンガルになったのかを詳しく聞かせてもらったことがあります。(この話はまたいつか整理して記事に書く予定です。)
2人に共通していたのが、家では常に日本語があふれている状態だったということです。両親との会話はもちろん、日本語の本、教材、通信教育、(近くにあれば)補習校、、。今のように手軽にYouTubeで日本語の動画を見せてあげられる時代ではなかったため、ご両親がかなりのエネルギーを使って自宅での日本語環境を整えていたことが想像できます。
また、その2人のうちの一人は、「両親が英語が得意じゃなかったのが良かったのかも」と最近になって思っている、と話してくれました。学校に行き始めてだんだん英語の方が楽になってくる時に、親にも英語が通じてしまうと、頑張って日本語をひねり出して話す作業が面倒になるのだと思います。
我が家では「家では日本語」「外では英語」で通しているものの、私と娘が他の親子と一緒に出掛けるときなど、娘は私が英語を話すところを小さい頃からよく見ています。
でも娘は、夫が英語を話すところを娘はあまり見たことがありません。週末などに家族で出かけてレストランなどでオーダーするときぐらいでしょう。夫は家族ぐるみの付き合いが苦手なため、イギリス人のママ友宅へのお呼ばれなども年に数回しか来ません。
家でも夫はもちろん一貫して日本語なので、娘は3歳半ぐらいまでおとーさんは英語ができないと思っていました。ある日私がおとーさんは英語で授業してるんだよ、と言ったらものすごくびっくりしていて笑ってしまいました。(夫は大学教員です。)
でも、もしかしすると、これが功を奏して娘の日本語が伸びた可能性もあります。
娘は、私相手に話しているときはポロポロ英語が混じることが多くなってきましたが、夫と話しているのを聞いていると頑張って100%日本語で話しているのです。また夫は、4歳児相手の会話でも難しい単語を容赦なく使って話すため、娘の語彙力アップに貢献しているのかもしれません。
最後に
これから小さな子供連れで海外へ引っ越す人の中には、自分自身が英語があまり得意でないとどうやって子供の英語をサポートしたらいいだろう、と不安になる人も多いかもしれません。海外にいる間にぜひ子供に英語を身に付けてもらいたいと思いつつも、自分の英語力が、、と心配になる気持ちもわかります。
でも、お家では子供に苦手な英語で話す必要は全くないと思います。むしろ子供が日本語力をキープしつつ英語(もしくは他の現地語)を習得するのには、親が英語を無理に話さない方がきっとうまくいくはずです。
日本人ママと現地人パパの国際結婚夫婦でも、似たような話をよく聞きます。
海外在住の国際結婚カップルで、子供をバイリンガルに育てようとしている人たちは、一人一言語ルール(ママは日本語、パパは英語、のように)で取り組んでいるところが多いようです。
でも、日本人ママの英語が流暢であればあるほど、自然と家族の会話が英語に傾斜していき、「ママとは日本語」「パパとは英語」がキープしにくくなります。
海外に住んでいると、つい子供の英語力アップの方に意識がいきがちです。でも、海外にいるからこそ、子供と質の高い会話を母語でたくさんしてあげる方が長い目でみるとずっと意味のあることだと思います。
※トルコ語はインドヨーロッパ系の言語ではないため、イタリア語やフランス語などと違って英語とは関連性が低い言葉である。日本語もトルコ語と同じく英語と関連性の低い言葉である。よってこの研究結果を英語圏に住む日本人の子供の言葉の発達の参考にしても問題はないのではと思う。