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罪悪感と思いやり

先週このあたりで仲良くしている友人たちで夜食事に出かける機会があった。主にプレイグループで知り合った仲間たちだ。専業主婦もワーキングマザーもいるがみな就学年齢前の子供のいるママたちで、外国人も数人いる。それぞれ子供を夫に預けて夜女性だけで食事をする、という企画をこの1年の間に数回行っている。普段子連れでランチやお茶などもよくしているが、子供がいるとどうしても会話に集中できないため内容の濃い話題はランチなどで話すことができない。よってこの夜の集まりは私たちにとって非常に有意義なもので、(あまり)嫌な顔をせず送りだしてくれる夫に感謝である。

前菜を食べている頃は「今日は絶対子供の話はなしね!」と普段はできないさまざまな話題が飛び交うのであるが、悲しいかな次第に話題が子供や家庭の話に移行しはじめる。その中で少し意外な話をする友人がいた。彼女は出産前からキャリアウーマンで、産休後は週3でまず復帰し、数か月前にフルタイムに復帰して働いている女性だ。旦那さんも同業なためお互いの仕事のペースもよく理解できているうえ、非常に家事育児に協力的な人である。傍からみると非常にうまくファンクションしているように見える家庭で、いまだにもやもや専業主婦の私からするとうらやましい限りである。そんな彼女が最近自分は娘と夫に対して非常に罪悪感がある、と話し出した。

 

彼女は、子供の世話を夫にさせることに罪悪感を感じる、自分は母親なのにこれでいいのか、というのである。彼女はつい最近1週間の海外出張から帰ってきたばかりなので余計そう感じているのかもしれない。しかし、自身もフルタイムで働く彼女の口から夫に娘を任せることに対して罪悪感を感じるという話を聞くのはとても意外だった。同じくキャリアウーマンのもう一人の友人(現在2人目の産休中)も私も同じように感じると同意したこともおどろきだった。私の場合は家事育児は100%(今は)私の仕事なので、それを夫に手伝ってもらうことに対して多少の罪悪感を感じることはあるが、それは私が働いていないがゆえのことだろうと思っていた。そう話すと、彼女たちは、「でもあなたの旦那さんが外で働いている間にあなたは家で働いているのだから、旦那さんが家に帰ってきたあとの家事育児は2人の責任になるはずじゃない?それを全部自分ひとりで引き受けているのは同じ罪悪感のためだと思う。」と言う。

確かに理論的にはそうである。さらに、主婦の仕事は家事であり、育児は夫婦ふたりで共同で行う仕事である、という考え方もあろう。それでも現実的には、日本よりははるかに男性の育児参加が進んでいるイギリスにおいてさえ、固定されたジェンダーの役割というのは私たちの心理にしっかり存在するのであろう。また、日本ではこの母親の役割というは三つ子の魂百までと言われるように幼児期の子供と母親のふれあいを非常に重視する。一方で、欧米では小学校にあがってからの方が母親は子供と過ごす時間が少ないとプレッシャーを感じるようである。親が学校と家の送迎をすることや、学校の宿題を親の監督のもとにすることが期待されていることも理由のひとつであろう。国際政治学者でありアメリカ国務省の重役まで務めたAnne-Marie Slaughterがアトランティック誌に書いた有名な論説Why women still can’t have it all がそれを物語っている。

www.theatlantic.com

 

しかし、それをしないことに罪悪感を感じるから何かをする、というのは何ともネガティブな動機である。長くそれを続けているとどこかでバランスが壊れてしまう気がしてならない。そこで、発想を少し変えて、思いやりを動機にして夫婦が助け合う、というはナイーブすぎるであろうか。例えば私のフルタイムで働く友人の例だと、自分が仕事で忙しいときに夫が家事育児を手伝ってくれるならそれは彼の思いやりだと思ってありがたく素直に受け取る。逆もしかりである。また、私のように専業主婦の場合は、夫が帰ってきたあとも育児家事を引き続き全部妻が行うのは、夫は仕事で疲れて帰ってきたところなのだから少しは家でくつろいでもらいたいという思いやりからだとする。そして夫はその思いやりをしっかり認識して感謝する(これは非常に重要だと思う)。もちろん、妻も一日家事育児で疲れているわけで、もう今日は無理!という日は夫にヘルプを求め、うちのように夫に家事能力がない場合は家事を適宜手を抜くなり放棄するなりする。また、思いやりをもって相手に接することで一種のmoral superiority (その行動をすることで相手より道徳的に優れていると思うこと)を感じるので、一方に負担が集中するときにも「自分ばかり大変だ」と被害者意識をもたなくてすむのではないか。

というわけで、実験的に夫への思いやりを意識して行動してみようと思う。そんなできた人間になれるのか私。そして今日はバレンタインデー。日本を出発してから我が家では強制的に日本式から欧米式へ移行してバレンタインデーの日には夫がお花を買ってくることになっている。しかし今年はあまりに仕事で忙殺されているため今日がバレンタインデーであることは夫は忘れているであろう。いつもならこういうシチュエーションではぶーぶーいうところであるが、思いやりをもって彼が帰ってくるまでにちょっといいチョコレートでも買いに行こうと思う。もちろん半分(以上?)は私が食べるので私好みのチョコを。